若者の悲歌

かわいそうでならない。でも何もしてあげられない。

朝からもう7,8時間、若者が一人、道路をはさんだわが家と真向かいの歩道に携帯用のイスを置いて座っている。

いったいどこから、いつやってきたのか。

見覚えのない若者。


気づいたのは、朝起きてトイレに入ったとき。トイレの窓からふと外を見て、彼に気づいた。


膝には紙ばさみにはさんだペラペラの紙。

いかにも研究者か事務員といった目つきで、ありもしないそばの書類に目を落としつつ(落としたつもりで)、真剣に何かを書き記している。

シャープペンシルだ。

丁寧に、細かく、一文字一文字力をこめて書く。


1行書くと、しばらくそのできばえを眺め、次には消しゴムを取り出して消す。

その1行をすっかり消す。

消すときも真剣だ。一文字一文字力をこめて消していく。


消し終わると、ふたたび同じ場所に、新たな1行を書く。そして消す。

いつ果てるのか、この所作。


書くのはいつでも紙の最上部。

彼の中では前に進んでいるのだろう、きっと。


疲れると、ぼおっと前方を見つめる。

視線の先は決まってただ一点。そこにはきっと彼にとって大切な何かが映っているのだろう。


恋人に振られたのか。

リストラにあったのか。


理由は知らない。何か巨大な衝撃が彼を襲ったことだけはわかる。


(2010/10/13)






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この記事へのコメント

2010年10月15日 19:55
人生って何なんでしょう・・・とふと思います。
その若者にとってその時間が生涯の糧となれば
いいなぁと思います。
ひょっとしたら神様の化身かもしれませんね。
mybochanさんに何かを感じてもらいたかったとか。

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