入院すると、即辞職?

体調が悪くて入院することは誰にだってある。だが、それが直ちに勤務先の辞職(退職)につながると考える人はまずいない。山田真貴子氏のことだ。

現に国会議員は不正を追及されると、たいていの場合、病院を駆け込み寺にして入院してしまう。なら議員辞職するのかといえば、そうではない。しばらくの間、身を隠すだけだ。

入院が辞職につながらないのは、一般の会社においてもしかり、公務員においてもしかりだ。入院したからといっていちいち退職されたのでは、雇う側はたまったものではないだろう。もしも雇う側が退職を強要したりほのめかしたりしたのだとすれば、それはそれで、また大問題である。

山田氏についても同じこと。野党が問題にしたのは、彼女が内閣広報官という職務にあり続けることだった。決して公務員を辞めるよう主張していたわけではない。だが彼女は電撃的に退職してしまった。退職金の額は伏せたまま……。

菅首相は、「山田氏辞職はあくまで週末に病院で受診し、入院が必要と診断されたためだ」と述べたという。つまり、(入院が必要)⇒(退職する)という論理が世では当然のこととしてまかり通っていると言わんばかりの前提に立っているのである。退職を言い出したのが山田氏なのか、官邸なのか、それとも病院なのか、肝心の主体がまったく見えない表現で、事実のみを述べているのである。

加藤官房長官はさすがにこれでは国民に納得してもらえないと考えたのか、「山田氏は入院し、職務を続けることが難しいと伝えてきた」と、発言主体が山田氏であったことをひと言追加した(本当に言い出しっぺが山田氏であったかどうかの事実関係は不明だが)。

いずれにしても、つい先日まで元気に国会に出頭していた彼女が、突如職務を続けられないほどの重病に陥り、詳しい検査結果が出ないうちに、いきなり辞職を申し出たことになる。しかもそれを閣議において、病状の詳細についての報告も受けないまま、直ちに認めたことになる。

もはやかばいきれなくなったという言い方もできるが、「彼女には職務を続けてもらう」と先日まで言っていた菅首相の朝令暮改的な態度の急変は、官邸が(つまり首相自身が)意志決定の能力をすっかり失っていることの証しだとも言える。

国民の冷めた批判の目に耐えきる力がもうないのだろう。キレて声を震わせる以外、まともな論証と説明をもって国民に語りかけ、疑問と批判に応えることが、もはや菅首相にはできないのだろう。

山田氏が高額な接待を理由に辞職に追い込まれた(とそこまで正直には官邸は言っていないが)ことは、同様の接待を受けた他の十何人かの政府高官が給料の一部返納程度で済まされてよいのかという、別の問題を生むことにもなろう。

山田氏というトカゲの尻尾切りだけで、首相や官邸が期待するほど容易にこの問題が収束するとはとても思えないのである。どこまでも果てしなく問題は続いていきそうである。根本は安倍前首相以来の官邸一強政治(官僚を国民にではなく首相になびかせる忖度政治)にある。それが腐りに腐った結果、首相の息子にまで擬似忖度する高額接待問題が生じたのである。

接待が国の政治に影響を与えたことはないと、事実関係を本気で調べもしないうちから官房長官は即座に断定してしまったが、それは願望にもとづく予測にすぎず、はたしてそうなのかは官房長官にも自信はなかっだろう。ここにいちいち事実関係を挙げることはしないが、各種新聞等で見るかぎり、その断定が「ウソ」であることはどうやら明らかなようだ。

今の菅内閣は、安倍前内閣同様、あるいはトランプ前政権と同様、ウソで塗り固めた内閣へと急速に転落していこうとしている。批判に耐えられず、自分を支持する者にしか目を向けられない「おどおどした政治」に堕そうとしている。

おどおどした政治を強い政治に見せかける手段は、ウソと詭弁である。それに加えて、批判を寄せつけず、ウソと詭弁をどこまでも貫き通す面の皮の厚さである。

森氏の問題もそうだったが、緊急事態宣言解除の問題にしても、菅首相は自信をもって当初の方針を貫くことがほとんど不可能な状況に追い込まれつつある。ある日コロッと方針が変わる、そんなことが繰り返されることになりそうである。

オリ・パラもどうなることやらわからない。国民の圧倒的不支持を気にもかけず(かけない振りをして)、「コロナに打ち勝った証しとして」などといまだに言ってはいるが、心の内では戦々恐々としているのが明らかに読みとれる。

なんにしろ、首相の政治方針は熟慮の末の方針ではなく、根拠がないまま思いつきで打ち出した方針(はっきり言えば意地で打ち出した方針)なのだから、貫けないのとは当然なのだ。もうほとんど、頼りになる力ある側近がいないのかもしれない。裸の王様状態に陥っているのかもしれない。

加藤官房長官がただ一人、「首相はちゃんと立派な絹の着物を着ていますよ」と、半分泣きべそをかきながら首相を支えている、そんな裏側の世界が目に見えるようである。

遠くない先に、「あっ、首相は裸だよ」と指を差す子供が現れても不思議ではない。それを言う大人はすでに多いけれども、下心があってそう言っているとしか首相はとらえないから、なんとか堪えていられるのである。純真な子供にそれを言われると、いくら面の皮の厚い首相といえども衝撃だろう。精神的に堪えられなくなった末に、山田氏のように、ある日突然入院、辞任となってもおかしくはない。それが解散総選挙を意味するのか、単なる総理辞任によって次の総理に譲ることを意味するのか、それはわからないが……。
いずれにしても、その日が近づいている。

(2021年3月1日)


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