テーマ:

愛の道、受難の道

山を越え、K市へ車を走らせたのは15年前。 探し当てた病院で 「どうだい、体調は」 驚いた君は、毛糸の帽子を持ち上げ 「これですよ、先生」 例のくりくりした瞳で 髪の抜けた頭をなでた。 「昨日、クラスのみんなで折ったんだ」 カバンから千羽鶴を取り出し ベッドの隅に掛けると 君はじっとそれに視線を注いだきり 時が…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

同窓会

昨夜の同窓会がしみじみと、時を忘れて楽しかったのはなぜ? もう何度となく出席した同窓会。 だのに、昨夜ほどしみじみと語り合えたことはない。 人生をぐんぐん前に進んでいたころ、過去なんて見えなかった。 今の一足を休止して、現在地点を確かめ合うことにすら、 ぼくらは意味を見いださなかった。 過ぎたと思えば、はや後方に遠の…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

日記 (四国・松山にも冬の気配)

今朝は冷え込んだ。 10度を下回っていた。 ぶるっと身震いして、セーターを着込む。 納戸からガスストーブを抱え出す。 書斎のエアコンを暖房に切り替える。 空は晴れている。 空っ風がカラカラと空き缶を転がす。 白く乾いた道。 手がかじかむ。 きゅーっと 身の締まる 懐かしい感覚。 ぼくはこの季節感が何より好…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

朝焼け

時間は、 「今」という、ありもしない幻影を脱ぎ捨て、 過去に蓄積する。 ぼくらにとって、 時間とは、 蓄積された過去。 車窓から 「今」が見えたりはしない。 ぼくらの「今」は、もはや残像。 過去、 それだけが真の実在。 ならばなぜ ぼくらは今を生きるのか。 過去へ、過去へと 流れ去るぼ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

恩師を悼む歌 ~あなたがくれたカリン~

告別式は簡素だった。 それがいかにもあなたらしく。 口を開けて 眠っているような あなたの胸に 花を手向け 奥さんに看取られなかった寂しさを思う。 一人暮らしのあなたを訪ねたある日 「ヘルパーに来てはもらっているけどね ほらこの通り元気 読書三昧だよ」 電話があって、弾む声で 「町内会の囲碁大…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

花は小さくてよい

花は小さくてよい。 小さいのがよい。 咲かなくてよい。 咲くとなおよい。 望みは小さくてよい。 小さいのがよい。 手にとれば、 それはうんと大きくなるのだから。 (2010/10/14) →ブログ・トップ →坊っちゃんだより
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

日記 2010/10/3

雨。10月の雨。何がなくもの悲しい。 土のにおいに、収束の影がある。 前へと広がっていく勢いを逆さまにした、収束の影。 人生の秋だ。 穫り入れといえば賑わしいが、孤独への祭り。 雨の中に、ああ、雨の中に。
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

真っ赤な花の花芯の中へ

いきなり宙に舞った。 すとんと下ろされたのは、自転車の幼児座席。 地面ははるかに遠く眼の下。 ふわりと浮かんだ夢心地。 ぼくはダミーのハンドルを握りしめた。 ぼくは知っていた。 父がウズラの卵を届けに行くことを。 ぼくも一緒に行くことを。 記憶の始まる数刻前、 「卵を届けに行くぞ。清志も行くか」 「うん、行く」 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

残照の中に

いつしか夏至が来て、夏至が去った。 コーヒー色の朝。 アザミの記憶は生々しく、 生まれたばかりの萩の芽と、池の面と、 植物プランクトンの多彩な気泡と、 紫のその棘とは、 ぼくの過去から焦点を奪い、 ベガのように、 行く雲のように、 定まらぬ光の輪を中天にとどめる。 あの日、 真白な開襟シャツのぼくが まだぼく…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more